ヴェトナム特許・商標制度概説


 ヴェトナムでは、日本とは異なって、著作権・産業財産権などに関して規定する単一の法律である知的財産法が制定されています。
 また、国際条約としては、パリ条約、マドリッド協定、PCT、マドリットプロトコル、TRIPs協定、ローマ条約などに加盟しています。現在のところ正式加盟をしていませんが、ストラスブール協定、ニース協定、ロカルノ条約などについては、これらの条約を適用した実務としての運用がなされています。

1.特許制度
(1)発明として保護されない対象(59条)
 1)発見、科学的理論、数学的方法
 2)スキーム、プラン、精神活動を実現するための規則又は方法、家畜の訓練、ゲームの遊び方、ビジネスの仕方、コンピュータプログラム
 3)植物品種、動物品種
 4)病気の予防、人間又は動物の診断又は処置方法など

(2)特許要件
 1)新規性(Novelty)
 なお、公開された日から6ヶ月以内に出願をすれば新規性が喪失しなかったとされる新規性喪失の例外が以下の場合に認められます(60条3項)。
   @意に反して公開された場合
   A科学的な発表の形式で公開された場合
   Bヴェトナムの公的な博覧会又は公的に認められた国際的な博覧会で展示された場合
 2)非自明性(Inventive Step)
 3)産業上の利用可能性(Industrial Applicability)
 
(3)発明の単一性
「単一の共通する発明としてのアイデアを形成する発明のグループ(A group invention forming a single common inventive idea)」については一出願することができます(101条2項)。

(4)その他の制度
 先願主義(90条)、国内優先権制度(91条)、分割出願制度、出願変更制度などが採用されています。

(5)権利主体
 1)発明者が自分の努力と費用とで発明をした場合には発明者です(86条)。
 2)別途に有効な契約書がなれれば、発明者への資金提供者又は発明者の使用者です(86条)。
 3)出願するためには、すべての共同発明者又はすべての共同資金提供者の同意が必要です(86条)。

(6)必要書類
 1)受理されるための最低条件としての書類
  @願書(ヴェトナム語)
  A明細書(詳細な説明及びクレーム)(ヴェトナム語)
  B手数料の支払い証明書

 2)その他の書類
  @要約(ヴェトナム語)
  A委任状(ヴェトナム語の翻訳を伴う他の言語)
  B譲渡証書(ヴェトナム語の翻訳を伴う他の言語)
  C優先権書類(ヴェトナム知的財産庁から求められた場合に必要)

 3)書類への署名などについて
  @出願人とヴェトナム知的財産庁との間の書類又は通信に関しては、出願人又は代理人の署名が必要とされます。
  Aすべての翻訳文は、原文どおりに翻訳されていることの出願人又は代理人の宣誓が必要です。
  B署名に関する認証は、例外的な場合にのみ要求されます。

(7)審査など
 1)方式審査期間
  出願日から1ヶ月以内
 
 2)出願公開
  @優先日から18ヶ月又は方式審査後の受理日から2ヶ月のどちらか遅い日に公開されます。
  A早期公開制度を採用しています。
 
 3)審査請求期間
  優先日から42ヶ月以内に審査請求する必要があります。
 
 4)実体審査
  @出願公開日から12ヶ月又は審査請求日から12ヶ月のどちらか遅い方で審査結果が出されます。
  A早期審査制度を採用しています。

(8)異議申立制度
  出願公開から最終の査定までいつでも異議申立ができます。

(9)登録及び特許公報
 1)登録は、登録料納付後10日でなされます。
 2)特許登録公報は、登録日から2ヶ月して発行されます。

(10)存続期間
  出願日から20年(93条)

(11)その他
 1)先使用権制度を採用しています。
 2)特許権者は、発明者に対して対価を支払う義務があります(132条)。

(12)実用新案
 1)登録要件
  @新規性(Novelty)
  A産業上の利用可能性(Industrial Applicability)
  B普通の知識になっていないこと(Not being a common knowledge)

 2)審査請求期間
  優先日から36ヶ月以内に審査請求する必要があります。

 3)存続期間
   出願日から10年(93条)

 4)その他
  日本とは異なり方法、プロセスなどが保護の対象となります。

2.商標制度
(1)商標の定義
 商標とは、異なる組織及び個人の商品又はサービスを識別するために使用される標識をいう(4条16項)

(2)商標の種類
 1)団体商標(4条17項)
 2)証明商標(4条18項)
 3)連合商標(4条19項)
 
(3)保護要件
 1)視覚的な標識であること
  文字、単語、絵、形状(立体的形状を含む)、又はそれらの組合せ、並びに1又は2以上の色彩を付して表されたもの

 2)標章の所有者の商品又はサービスと他人のそれらとを識別できること
  ホログラム商標、動く商標、臭い商標、音響商標は保護対象とはなりません。

(4)保護されない商標
 1)国旗又は国の記章と同一又は混同する程類似する標章
 2)実名、変名、ペンネーム、国家元首の肖像、国家的なヒーロー、ヴェトナム又は外国で有名な者と同一又は混同する程類似する標章
 3)商品又はサービスの出所、機能、用途、質、価値、又はその他の特徴に関し、需要者をして取り違える、混同する、又は需要者を欺くような標章
  など(73条)

(5)先願主義
  同日出願の場合、日本とは異なり同意がなければどちらも拒絶されます(90条)。

(6)使用意思
 1)登録に際しては使用意思の宣誓書又は現実の使用の証明書は要求されません。

 2)第三者によって有効な取消請求がなされた場合、その取消請求前継続して5年間使用していない場合にはその登録が取り消されます(95条1項d号)。なお、その取消請求前3ヶ月から使用を開始又は再開する場合は使用とはなりません。

(7)一商標多区分
  一出願で複数区分を指定することができます(101条4項)。

(8)必要書類
 1)受理されるための最低条件としての書類
  @願書(ヴェトナム語)
  A商標見本
  B指定商品又は指定サービス(ヴェトナム語)
  B手数料の支払い証明書
 2)その他の書類
  @委任状(ヴェトナム語の翻訳を伴う他の言語)
  A譲渡証書(ヴェトナム語の翻訳を伴う他の言語)
  B優先権書類(ヴェトナム知的財産庁から求められた場合に必要)

 3)書類への署名などについて
 @出願人とヴェトナム知的財産庁との間の書類又は通信に関しては、出願人又は代理人の署名が必要とされます。
 Aすべての翻訳文は、原文どおりに翻訳されていることの出願人又は代理人の宣誓が必要です。
 B署名に関する認証は、例外的な場合にのみ要求されます。

(9)審査など
 1)方式審査期間
   出願日から1ヶ月以内
 
 2)出願公開
   受理日から2ヶ月

 3)実体審査
  出願公開日から6ヶ月

(10)異議申立制度
 1)出願公開から最終の査定までいつでも異議申立ができます。

(11)存続期間
 1)出願日から10年
 2)10年毎の更新制度があります。

(12)その他
  並行輸入は認められます。 

以 上

作成日:平成19年4月19日